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折込広告の動向と新たな活用

寄稿 株式会社読売IS
メディア開発本部マーケティング部
有村 潤也

 

新聞に折り込まれて各家庭に届けられる折込広告。普段の買い物や遊びの計画など、暮らしに役立つ情報源として高く評価されてきた。しかし近年、デジタル化の進展により、消費者の情報収集手段は多様化してきている。一般社団法人日本折込広告業協会(以下J-NOA)が実施した折込広告に関する各種調査結果をもとに、時代にマッチした折込広告の活用方法について考察したい。

 

リテール上位。“買い物は自宅で”派も定着?

まず、全国165地点で折込広告を収集し、紙面情報をデータベース化している「新聞折込出稿統計調査」のデータから、新聞折込広告の1世帯当たりの年間枚数(2022年)を業種別に見ていく。

業種では「小型スーパー」が最も多く530.4枚。次いで「その他サービス」271.5枚、「家電」171.6枚、「塾・予備校」166.2枚、「ドラッグストア」141.1枚、「大型スーパー」137.9枚、「カジュアル・衣料洋品」114.8枚と、リテール業種が上位にあがった。
店舗に来店を促すために折込広告を活用するケースが多い。出稿枚数2位の「その他サービス」は、近年、市場規模が拡大しているリサイクルやリユースビジネスの広告展開が増えたことが要因として挙げられる。
前年比に着目すると、「旅行」の263.6%が大きく伸長している。全国旅行支援などの観光活性化策の実施に伴い、旅行案内の折込広告が増加した。このほか「日用雑貨・家庭用品」155.0%、「化粧品」120.0%など、通信販売が多い業種の折込広告の前年比が伸びており、コロナ禍もあって、自宅に居ながらにして買い物をするスタイルの定着が進んでいることが伺える結果となった。

【2022年業種別出稿枚数ランキング&前年比(全国)】

出典:「新聞折込出稿統計調査REPORT(全国版 2022年) 一般社団法人日本新聞折込広告業協会」を基に作成
 

◆折込広告の強み

次に、全国47都道府県の15~74歳の男女を対象に郵送調査した「新聞折込広告効果指標データ(全国版)」から、折込広告のユーザー属性や広告評価について検証した。

新聞を定期購読している人で折込広告を1週間に1日以上読んだ人の割合は76.1%であった。多くの人が新聞と一緒に折込広告にも目を通していることが分かる。性別・年代別にみると、「女性40台」以上は半数超が折込広告を見ていた。閲覧割合は年齢が上がるにつれて高くなり、「女性70~74歳」が80.4%と最も高い。職業別では、主婦が62.2%と最も高く、依然として、日々の買い物や暮らしの情報源として活用されていることが推察される。

【新聞折込広告到達率(1週間リーチ)/個人全体・新聞購読者・性年代別】


出典:「新聞折込広告効果指標データ(J-READ+2021) 一般社団法人日本新聞折込広告業協会」を基に作成 N=24,874

【新聞折込広告到達率(1週間リーチ)/個人全体・新聞購読者・本人職業別】


※「1週間リーチ」とは、調査期間の1週間で、1日以上新聞折込広告に接触した人の割合。調査対象者が日記形式で曜日ごとに新聞折込広告へ接触した(読んだ)かどうかを、記録する方法で調査する
出典:「新聞折込広告効果指標データ(J-READ+2021) 一般社団法人日本新聞折込広告業協会」を基に作成 N=24,874

テレビやラジオ、インターネットなどの広告媒体別の評価を見ると、新聞折込広告は、「商品やサービスの価格がよくわかる」が27.4%と高く、「商品やサービスの内容が理解しやすい」(24.1%)、「商品やサービスの画像や文字が見やすい」(21.1%)、「商品やサービスの内容を再度見たり、確認しやすい」(20.1%)などが続く。紙面上に情報が見やすく配置されている一覧性や、あとから読み返すことのできる保存性に高い評価を得ていることがわかる。

【媒体評価(新聞折込広告)】

※18の評価項目について各媒体が「あてはまる」とされた割合
出典:「新聞折込広告効果指標データ(J-READ+2021) 一般社団法人日本新聞折込広告業協会」を基に作成  N=24,874
 

◆折込広告のこれからの活用方法

季節のイベントやトレンドを盛り込んで制作されている折込広告は、読者に新しい商品やサービスの情報を認知させるだけでなく、関心を喚起し、購買意欲を高める。旬の食材を購入して献立を立てる、地域の特産物を一堂に集めた物産展に足を運ぶ、長期休暇の旅行プランを立てるなど、消費者行動に強い影響力をもつ広告媒体といえる。

最近では、折込広告の紙面でアプリ、LINE、デジタルチラシの登録を促す案内も増えている。シニア層に強い折込広告と、若年層が強い関心を見せるデジタルを連動させることで、幅広い年代層への情報伝達が可能だ。総務省の「令和3年通信利用動向調査」によると、スマホ保有率は60歳代で約8割、70歳代でも半数を超える。近年ではシニア層のスマートフォン保有率も高まっている。こうした層を折込広告を入り口にデジタルの世界に誘導し、リッチコンテンツの配信やタイムリーな情報発信、SNSキャンペーンの案内など、折込広告の掲載情報に加えてデジタルでも情報発信することで、消費者の購買意欲をより高めることができると考えられる。

弊社が参加するリテールアド・コンソーシアムでは、ECサイトを持たない企業に対し、ECサイト構築と折込広告による販促をサポートし、その集客効果についてテストマーケティングを行った。茨城名産の「干しいも」を商材として1都3県に5万部の折込広告を配布し、ECサイトと電話で注文できる販売手法をとった。

折込広告のオモテ面では商品特性を紹介し、ウラ面でチラシ掲載のQRコードからECサイトに遷移した後の入力方法を詳しく説明。ECサイトの購入画面の入力に抵抗感なく買い物できるようチラシのデザインを工夫した。

注文件数は電話で6件、ECサイトで11件と、ECサイトの購入が電話申し込みの約2倍で、折込広告からのECサイト購入誘導に大いに可能性があることがわかった。今後は、折込広告のクリエイティブ表現やECサイトのカゴ落ちの改善などについても検証していきたい。