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店頭販促、広がる手法 ~サイネージ拡大、折込活用も

スーパーやホームセンターなどの小売業界で、店頭販促の取り組みに変化が起きている。コロナ禍により、売り場でスタッフが調理したメニューを試食として提供したり、来店客に新商品を直に手渡したりすることが難しいからだ。困難を克服しようと、デジタルサイネージ(電子看板)を活用して新たな客層を掘り起こす試みが増えている。折込チラシによって商品特性をじっくり伝えようとする動きも出てきている。

■サイネージ利用2倍に

売り場で商品をアピールするサイネージが伸びている
(東京・渋谷のimpactTV社で)


スーパーなどの店頭では新型コロナウイルス感染防止のため、業界で「マネキン販売」と呼ばれる試食提供などの店頭販促がほぼ姿を消した。加えて、来店頻度の減少やまとめ買いの動きが強まり、顧客は定番商品を中心に計画的に買い物をする傾向になっている。

店側やメーカーにとっては、新商品のアピールが従来以上に難しくなっているのが実情だが、こうした中で利用を伸ばしているのがデジタルサイネージだ。流通小売業向けにマーケティングサービスなどを展開するインパクトホールディングス傘下の「impact TV」(東京・渋谷)では、小売店などに提供するサイネージ「PISTA」の2021年9月時点の稼働台数が前年同月比で2倍の3万7000台超と大きく伸びた。

サイネージはオンライン対応型で、ネットを通じて複数の端末を一括管理できるのが特徴。売り場の棚に設置した小型画面には人感センサーやカメラを備え、性別や年代といった顧客属性を分析し、動画コンテンツの出し分けが可能だ。大手食品メーカーや日用品メーカーなどが作成したテレビCMや独自の動画コンテンツを店頭で流し、人手を介さずに販促を行うことができる。

impact TVの田中達也ICTソリューション部長は「コロナ禍以前から省人化需要により引き合いは増えていたが、コロナ禍に伴う店舗DXの加速でサイネージへの関心がさらに高まった」と話す。メーカー担当者による店舗訪問が難しい中で、「サイネージは売り場の『鮮度』を高める存在」としてメーカーも重視しているという。

■チラシで新商品PR

  • オタフクソースが作成した「デーツ」の折込チラシ

一方で、新商品の打ち出しに折込チラシを活用する動きも根強い。オタフクソースは2020年3月に発売したドライフルーツ商品「デーツ」(なつめやしの実)の販促に折込チラシを活用。プルーンやレーズンに比べて食物繊維などの栄養素が豊富なことをアピール、裏面ではシリアルやトースト、お酒のおつまみなどのアレンジレシピを紹介するなど、商品特性を伝えている。

同社マーケティング部販促課の柴田尚子さんは「デーツのターゲット層は健康志向の強い50~60代以上がメーンで、新聞購読層と合っている。デーツの認知度を高めるためにも、なじみのある折込チラシを活用した。(投下後は)徐々に広がりを感じている」と話す。

デーツは世界的にはポピュラーなドライフルーツだが、日本での認知度はまだ低い。市場規模も一部のナッツ業者が取り扱うのみで限定的だった。同社はもとも主力商品の「オタフク お好みソース」の原材料として40年以上デーツを使ってきたが、会社全体で健康需要の取り込みに注力する中で、今回の商品化に踏み切ったという。

折込の活用にはコロナ禍という事情もある。「本当はしっかり店頭で説明して買ってもらいたいが、今はそれができない。折込チラシなら、デーツを知らない人にもしっかりと大きなサイズで説明できる。コロナ禍で在宅時間も増えている中で、折込チラシをじっくり読まれる方が多いので、読み物風の中身にしている」と柴田さん。同社は10月10日の「お好み焼の日」にも折込チラシを投下するなど、今後も販促の手段として活用する考えだ。