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マーケティングの効果測定「3つの手法」を実践

寄稿 株式会社デジタルホールディングス
 執行役員:VP
千島 航太

企業のマーケティング活動において、投資対効果を最大化するうえでも効果測定が欠かせない。世の中のデジタル化が進み、ユーザー(生活者や顧客企業)との接点が多様化する中で、オフラインとオンラインのマーケティング施策を統合的に評価したいという需要は高まる一方だ。こうした流れを受けて効果測定の手法論も多様化が進んでいるが、大別すると3つの手法に整理できる。今回は、マーケティングの効果測定の3つの手法の特徴を整理すると共に、今後の展望を述べたい。

❶アスキング
アンケート調査やデプスインタビューなどユーザーの声を直接聞く方法
<メリット>
○ ユーザーの心理や行動の背景を直接聞くことができるため、深い洞察を得やすい
○ 状況に応じて質問内容を調整できるため、予期せぬ発見に繋がる可能性がある
○ オンライン/オフライン施策を横断した調査が可能
<デメリット>
○ 回答者のバイアス、記憶の曖昧さにより、データの正確性・客観性に欠ける場合がある
○ サンプルサイズに限りがあり、大規模な調査になるほど時間とコストがかかる

❷デジタルトラッキング
オンライン上で広告をクリックして購買が発生する等、オンライン上のユーザー行動を追跡し、データ収集・分析する方法
<メリット>
○ ユーザーの実際の行動データを基にしているため、(行動という側面では)精度が高く、定量的・客観的に評価しやすい
○ リアルタイム性が高い
○ 大量のユーザーデータを自動的に収集しやすい
<デメリット>
○ オンライン上での行動追跡になるため、オフラインの活動や、行動の背景にある心理変容や感情が掴み辛い
○ プライバシーの問題や法的規制、プラットフォーマーの方針などに大きく影響を受ける(昨今のCookieの制限など)
○ ユーザー接点の多様化やプライバシー保護・法的規制の影響を受け、複数のデバイスやプラットフォームをまたいだユーザー行動の統合は技術的難易度も高まり、全体像を捉えきれないケースもある

❸統計解析
マーケティングミックスモデリング(MMM)に代表されるように、オンライン/オフライン問わず多様なデータを用いてメディアの良し悪しや将来予測などを統計的に推定する方法
<メリット>
○ オンライン・オフラインを問わず評価できる(※データ化できる限りにおいては)
○ 時系列データを用いることで(メディアやチャネル間の比較だけでなく)、季節性や長期的な効果の分析も可能になる(※データ化できる限りにおいては)
○ 複数の要因の同時分析、因果関係の推定、将来の効果予測や予算配分の最適化にも活用できる等、より高度な分析が可能
<デメリット>
○ 精度の高い分析をするために、十分な量と質のデータが必要
○ 多様なデータを揃え、加工する負荷が大きい(リアルタイム性の欠如)
○ 高度な統計知識が必要であり(モデルの仮定や限界の理解も)、解釈が難しい場合や見る人により解釈が異なる場合がある

なお、効果測定において代表的な役割を果たしてきたTVの視聴率調査は、従来は「統計理論に基づき対象者を無作為抽出して調査協力を依頼する」というアスキング(❶)の一種であったが、昨今ではTVの視聴データもデジタルトラッキング(❷)が進んでいる。

前述したとおり、効果測定の3つの手法はいずれも一長一短ある。
デジタルトラッキングは分かりやすさもあり、特に重要視されてきたが、プライバシー保護やCookie規制の影響を受けやすく、今後のマーケティング活動における効果測定は、より一層複合評価が加速していく。

こうした背景を受けて、三陸鉄道40周年に合わせてリテールアド・コンソーシアムと共同で、折込チラシを中核とする統合型マーケティングの効果を検証する実証実験を行った。(※1)

本実証実験では、以下の手法を組み合わせた複合評価を行った。
・パノラマチラシを見た生活者のECサイト、コールセンター、リアル店舗への流入や購買の評価(❷とアナログ計測の複合)
・EC購入者に対して購入完了ページでのWebアスキング調査(※2)を行い、折込パノラマチラシを見た or 見ていない生活者の購入単価の差異や購買動機の分析(❶+❷)
・SNS上やリアルの場での生活者の声(❶)
・本実証実験で購入した生活者が一定確率でリピート購入する期待値をLTV(顧客生涯価値)として推計(❸)

※1 実証実験内容および効果測定結果の詳細については以下のページを参照
https://retailadconsortium.jp/topics/release013/

※2 株式会社オプトが開発したアンケートソリューション「ONE’s Data View」(商標出願中)を活用

実証実験で活用した実際の「ONE’s Data View」の画面

今回の実証実験では、投下したマーケティング費用と実購買金額による投資対効果に留まらず、LTV視点での将来の期待値や生活者の購買動機、今後期待する企画など多面的な評価が可能となり、折込チラシによる販売促進のポテンシャルが明らかになっただけでなく、次の企画をアップデートする示唆や仮説を多数得ることができた。

株式会社デジタルホールディングス
執行役員:VP
千島 航太(ちしま・こうた)
2007年オプト(現デジタルホールディングス)入社。モバイル広告セールス、モバイル企画開発部長、コンサルファームへの出向を経て、ホールディングス子会社のグルーバーを創業。代表取締役を務めたのち、オプトと経営統合。21年1月よりオプト執行役員就任。22年4月よりデジタルホールディングスのグループ戦略を担う傍ら、オプトの社外取締役も務める。24年3月から現職。