topics

  • FOLLOW US
  • twitter
  • facebook

スマートフォンの位置情報による人流分析ツールを活用した折込広告のエリア戦略

寄稿 株式会社読宣
営業本部 営業推進室
種島 智治
 

コロナ禍を経て、生活者の行動様式に大きな変化があったことが影響して、位置情報を活用した人流データへの関心が高まっています。緊急事態宣言が発出された頃には、ニュースなどで都心部での、コロナ前後の人流の増減が取り上げられていたので、記憶に新しいと思います。
その時に注目されたのが「KDDI Location Analyzer(以下、KLA)」などの人流分析ツールです。KLAは、スマートフォン契約者の位置情報データを拡大推計して、最新の人流データを取得できるもので、国勢調査や住民基本台帳等の公的統計では得られないリアルタイム性の高い人流データから、これまで漠然としていた来訪者の属性や来訪地域を可視化できます。さらに、道路の通行人口・交通量分析や対象地域の滞在人口を分析できる機能も持ち合わせています。
以前は官公庁が活用するケースが多かったですが、コロナ後は対面調査ができなくなったため、代替策として採用している企業が増え、広告代理店、不動産デベロッパー、流通、小売、飲食など多種多様な業界で導入が進んでいます。

≪KLAの特徴≫
①大量のサンプルと粒度の細かなデータ
②正確な性年代情報
③鮮度の高いデータをセルフ分析

≪取得できるデータ≫(図1~3参照)
・施設来訪者数(性別・年代)
・日別
・曜日別
・時間帯別
・リピーター率・来訪者をマップで可視化

【図1】性、年代、平日・祝休日別に来訪者属性がグラフ表示される

【図2】時間帯別に来訪者の年代がグラフ表示される

【図3】来訪者の居住地の多寡で地図が色分けされる

≪人流データから見えること・できること≫
・販促施策前後の来訪者の変化を知る
・顧客がどこから来店しているか把握できる
・競合店の商圏を知る
・自店と競合店など複数地点を比較分析できる

公的統計データは、月・年単位のリリースですが、KLAは直近のデータを取得できるので、イベントやキャンペーン前後の人の流れや属性を即座に見える化できます。外部要因による変化が、人の動きにどう影響を与えるかをリアルタイムに捉えられるのは、最大の特徴であると言えます。

具体的な活用法をいくつか紹介します。
・自店の商圏や属性の把握。折込広告・ポスティング・WEB広告をセグメントする裏付けデータとしての利用。
・出店前の基礎資料として、既存の商業施設にテナント入居する際に、自店のターゲット層の来店が多い施設かどうかの分析。
・これまでぼんやりとしか認識できていなかった他店の属性や商圏の把握。
複数地点の分析を行えば、自店と競合店を同じ土俵(期間・時間帯・滞在時間)で比較することができます。例えば、売上不振店と競合店をまとめて比較することで、自社の弱い地域や属性を把握することができます。分析結果から、他社のシェアが高いエリアに折込の出稿量を増やす。若年層の高いエリアにはWEB広告、年代に応じた施策を講じることでシェア奪還も可能になります。

折込広告会社の強みの一つである、アナログ的なフィールドワークで培ってきたエリアマーケティングのノウハウに、新たに人流分析データを駆使したデジタル的視点での分析を融合させることで、提案できる領域が広がります。これまで、得意先の窓口は、主に販売促進の部署でしたが、人流分析ツールがあれば店舗開発部署にも提案できるようになります。
KLAなどのツールで分析できる機能は進化・拡張しています。人流データを読み解き、マーケットシェアを高めるツールとして活用することで折込広告の可能性がさらに広がるのではないかと考えます。

株式会社 読宣
営業本部 営業推進室 主任
種島 智治(たねしま・ともじ)
2006年読宣入社。08年マーケティング部。22年より営業推進室にて市場調査全般を担当。スーパー、ホームセンター、家電量販店の新規出店資料や顧客データ分析などに携わる。調査のために訪れたスーパーは3,000店を超える。