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小売業のオンライン参入 「商品マスタ」対応が課題に
~「EdgeTech+ 2022/ Retail AI EXPO」講演から~

ECモールの運営や出品など、小売企業がオンライン事業を始める際に課題となるのが、商品名や画像、価格、説明など様々なデータをまとめた「商品マスタ」の取り扱いだ。ペットボトルの容量や、ポテトチップスの風味など、店頭で商品を手に取れば一目瞭然の情報であっても、オンライン販売時には表示が必須となるが、入力用のデータ整備は十分に進んでいない。AIを活用した商品マスタのデータプラットフォームを提供するLazuli(東京・千代田区)の北庄司英雄執行役員と、小売り大手ベイシア(前橋市)の戸枝智存EC部長が、横浜市で開催された「EdgeTech+ 2022 / Retail AI EXPO」で現状の課題と対応策などについて講演した様子をリポートする。

◆手作業で入力。書式もバラバラ・・・
北庄司氏は、食品メーカーと卸、小売りの間で商品データをやり取りする際の書式などが統一されておらず、「前時代的」とも言える形でデータが行き交うことで、非効率になっていると指摘。小売業がオンライン事業を始める際には、何千点、何万点に上ることもある商品の情報を、人手をかけて一つずつ入力せざるを得ない事態が生じており、「ECで困っている企業は多い」と述べた。

(北庄司氏)

2020年からデジタル対応を本格化させたベイシアの戸枝氏は、オンライン販売を始める上で「商品タグ」をどれだけ多く登録できるかが重要だと指摘した。商品タグとは、例えばヨーグルトの商品に「朝食」「健康」「乳酸菌」「低糖」など、様々な関連するキーワードを登録するもので、消費者が検索した時に見つけやすくする狙いがある。タグの登録は、小売業の従業員にとっては必ずしもなじみの深い作業ではない。戸枝氏は「商品部長だった私でも(一つの商品に)3つくらいのタグしか思い浮かべられなかった」と振り返る。

◆スイカは「酒のつまみ」? AIの課題
こうした問題を解決するため、Lazuliは商品マスタの基礎となるデータをオンライン上で収集し、AIでデータ書式の統一や商品情報の補足修正などの処理をしたデータプラットフォームを整備、提供している。ベイシアは、このサービスを導入したことで商品マスタの登録にかかる手間を減らし、膨大な商品をオンライン販売で取り扱えるようになった。在庫を自社で持たずに卸売業者の商品を販売する「ドロップシッピング」を採り入れ、ペット用品の取り扱い商品数を大幅に拡大したことで、ECでのペット用品の売上高は、全国136店(22年2月時点)あるベイシアのどの実店舗よりも多額になったという。

ただ、AIは万能ではない。戸枝氏は果物の「スイカ」をAIが「酢イカ」と誤認識し、つまみメーカーのタグがつけられていたとのエピソードを紹介し、「間違いを直した時に(AIが学習し)、データの精度が上がっていくことが大切だ」と強調した。

(戸枝氏)

講演後、取材に応じた北庄司氏は、EC事業に参入する小売業者は大手、中小を問わず増えていると述べ、「商品マスタの重要性は今後、さらに注目されていくだろう」との認識を示した。

(講演の様子)

「EdgeTech+ 2022」は、社会課題解決やインフラを支える先端技術などをテーマに2022年11月16~18日、パシフィコ横浜で開かれ、延べ2万2000人が参加した。特別企画として、Retail AI EXPOも同時開催し、小売り分野でのデジタルトランスフォーメーションを促進する最新技術などが紹介された。
2023年1月10日~2月10日にはオンラインで、「EdgeTech+ 2022」の一部のセミナーコンテンツのオンデマンド配信や、出展社による製品・サービスの説明動画配信などを行う。