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【データで見る折込トレンド㊦】
「お得」と「企画」の使い分け進む~チラシレポートの調査から
2020.11.24UP
折込チラシの情報をデータ化し、メーカーや小売・卸業者、販促会社向けに外販する「チラシレポート」(東京都中央区)。全国の主婦などを中心とした約1100人のモニターのネットワークを生かし、スーパーやドラッグストア、ホームセンターなど約1000チェーン、約3万9000店舗分のチラシの情報を収集・分析している。
これらのデータから見えてくる最新の折込広告のトレンドと今後の展望について、同社事業推進部の泉順也氏は「チラシならではのお値打ち品と、しっかりと利益を生み出す企画商品の両面を使い分けながら掲載する傾向が強まるのではないか」と指摘する。
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■MD戦略の参考に
――スーパーなどの小売業が折込チラシのデータを必要とする背景には、どういった事情がありますか。
チラシレポートのデータは主に、卸売業やスーパーなどの流通業者様が店頭・チラシといった自社の販促活動を考える際の参考資料として活用していただいています。
例えば、スーパーA社が1年間52週のMD(商品政策)を検討するにあたり、競合するB社やC社がどんなMDや販促活動を行っているか調べるとします。実際に店頭調査に行って売り場を見てくるのも一つの手段でしょうが、全国のあらゆる場所で行うのは現実的ではありません。
そこで、まずライバルのB社やC社がチラシ上でどのような販促をしているかをデータで検証することが有効な手段となります。チラシで行っている販促活動は、店頭でも行っているからです。
――どのような切り口で販促の企画を実施しているか、チラシという窓を通じて調べるというわけですね。
そうですね。流通業は常に新しい企画を求めています。例えば、10月の企画で「ハロウィーン」は常に上位に来るメジャーなテーマですが、それ以外にも色々なチェーンで様々な企画を打ち出しています。むしろ掲載数が少ない下位のテーマこそ、「このチェーンではこんな新しい取り組みをしていますよ」「この企画は珍しいですが、御社でも参考になりませんか」といった提案につながる可能性があります。
季節物でいえば、「手巻き寿司」はひな祭りや七夕といった歳時に合わせて展開するイメージですが、それ以外の時期にどんなタイミングでスーパーが手巻き寿司を提案しているのかは、メーカー側にとってなかなか把握しづらいところがあります。実はバレンタインでも提案している、定番の「お酢」以外にどんな商品を提案しているといった情報を、チラシを通じて把握できる点が強みとなります。
このように、チラシで蓄積されたデータベースが顧客企業にとってMD戦略の参考になっているわけです。
■商品絞り込みメリハリ
――消費者への訴求という観点から、折込チラシの傾向として感じていることはありますか。
スーパーのチラシに関していえば、「特売」と「企画」の使い分けが進んでいるように感じます。
紙面にお値打ちの商品を並べてお得感を打ち出す一方、企画のコーナーでは「クリスマス」「節分」など歳時に応じた商品をそろえて買い物意欲を誘い、消費者の財布のひもが緩むような内容や仕掛けをするといった具合です。
両面印刷のチラシであれば、表と裏で使い分けるイメージ。表面の日替わり特売で「ああ、安いな」と感じさせた上で、例えば「父の日」をテーマとした企画では、和牛やマグロといったやや値の張る商品、利益率の高い総菜などを多めに載せるといった構成です。
――ただ単に特売商品を羅列する、といった従来の手法が変わりつつあるのですね。
それだけではありません。チラシに掲載する商品数を絞り込んでいくのが今後のトレンドになるのではないかと見ています。アイキャッチとなる目玉商品や一押し商品に、よりフォーカスして販促を行う傾向が強まるのではないでしょうか。
――流通業界に詳しい寺本高・横浜国立大教授も、リテールアド・コンソーシアムのインタビューで「折込チラシはもっと掲載する商品を絞り、インパクトを与える役割に特化してもいい」と指摘し、デジタルとの役割のすみ分けに言及していました。
チラシにはどうしても特売情報、安い商品の情報というイメージがありますが、安ければお客様が来てもらえるというのはもちろんのことです。それよりも、「魅力的で付加価値の高い商品をお値打ち価格で提供している」ということを紹介するツールにしてもらいたいと思っています。
安さだけでチェーン同士が競い合ったら消耗戦に陥り、やがて多くが苦境に立たされてしまうでしょう。安さ以外のところでどう知恵を出し合い、集客につなげるか。お客様に買い物の楽しみをどう伝えるか。そうしたことのお手伝いをすることがチラシや弊社の本来の役割だと思っています。