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消費者の行動変容促すコンビニ
~流通アナリスト・渡辺広明氏に聞く㊦
2021.01.22UP
誕生から40年以上を迎えた日本のコンビニ。全国の店舗数は5万店を超え、身近な買い物だけでなく社会基盤(インフラ)としての役割も高まっている。
ローソン勤務などを経て独立し、コンビニを中心に小売業界の分析を手がける流通アナリスト・渡辺広明氏は「レジ袋の削減によってエコ意識を高めるなど、コンビニは消費者の行動変容を促す役割も担っている」と指摘する。
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■「700m商圏」
――社会の高齢化が進む中で、コンビニをはじめとした小売業の商圏にはどのような変化が生じていますか。
とくに高齢者については、買い物のために1日700㍍以上は歩かないと言われています。持ち帰りの「中食」を中心に、食事についてはコンビニや「まいばすけっと」のような食品ミニスーパーといった狭小商圏の小売業が今後、支持されていく流れになるでしょう。
一方で、日用品などについてはネット通販が買い物の基本になっていく。2つの購買チャネルを中心に消費が回っていくと考えられます。
――「700㍍商圏」は今後もどんどん狭くなっていくのでしょうか。
全国のコンビニ店舗数は約5万6000店に達し、飽和状態にあります。今後は出店数が右肩上がりでは増えていかないので、商圏についてもこれ以上は狭くならないとみています。
■「脱・消耗戦」を
今後の焦点は、むしろ現在の店舗網をどう維持するかです。神奈川・日吉の私の自宅周辺にも大手コンビニ3社の全ての店舗がありますが、必ずしも夜中に全部空いている必要はない。夜中は年に数回しか買い物に行くことがないからです。
たとえば、行政が間に入って、地域ごとに医者のような輪番制の深夜営業を導入するといったスタイルも一案ではないでしょうか。各社が互いに競っている限りは難しいかもしれませんが、先の見えない無意味な消耗戦はできる限りやめた方が良いと個人的には思います。
■エコ意識高める
――宅配ビジネスについてはどうでしょうか。
コロナ禍に伴う外出自粛もあり、消費者の自宅まで商品を届ける宅配の需要はコンビニでも高まり、各社は対応を急いでいます。セブン―イレブンは西濃運輸と協業、ローソンはウーバーイーツなどと連携して宅配サービスを始めています。
ただ、取り組みは緒に就いたばかりです。商品のピックアップや宅配にかかるマンパワーの問題に加え、配送料がかかるといった課題もあります。今後どこまで広がるかは注意深く見ていく必要があるでしょう。
――昨年はレジ袋の有料化というトピックもありましたが、影響はどうみていますか。
レジ袋はこれまで店にとってはコストになっていましたが、有料化で逆に店舗あたり月1万~1万5000円程度の収入になっているようです。
そもそもレジ袋を有料化したところで、CO2の削減にはそれほどつながらないとの見方もあります。ただ、私はコンビニがレジ袋の削減に取り組むことで、消費者のエコ意識を高める効果があるという側面が大きいと考えます。
コンビニは年間で累計174億人が利用しています(2019年の来店客数=全店ベース)。これほど日常使いが浸透した産業だからこそ、消費者の行動変容を起こすことが可能で、またその役割を担うべきだと思っています。
無駄なものは極力ない方が良い。環境問題や、食品ロスの削減といった社会課題の解決のために、コンビニの果たす役割はますます重要になっていくと思います。
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渡辺 広明(わたなべ・ひろあき) 流通アナリスト。1967年、静岡県浜松市生まれ。東洋大学法学部卒。ローソンで22年間、店長・バイヤーとして仕入れ、商品開発を経験。ポーラ・オルビス、TBCでブランド開発や海外業務などに7年間携わった後、独立。現在、「やらまいかマーケティング」代表取締役。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(ベストセラーズ)などがある。