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無人店舗サービスを通じた新たな購買体験の提供

東急百貨店と日立製作所は、昨年秋、日立の小型無人店舗サービス「CO-URIBA(コウリバ)」を活用したビューティー関連商品のサンプルを使用した実証実験に乗り出した。データを活用して購買行動を分析し、新たな購買体験の提供や、効果的な顧客の誘導を行う実験の場となっている。

◆渋谷の施設を実験場に
東急百貨店は、渋谷の新たなランドマークをめざす「Shibuya Upper West Project」に伴う2023年1月31日の東急百貨店本店の営業終了も見据え、顧客のさらなる満足度向上に向けたさまざまな取り組みを検討してきた。中でも、コスメ&ビューティーは、食品と並ぶ重点分野。渋谷における利用を継続的に楽しんでいただくために、渋谷ヒカリエのショッピングエリア「ShinQs(シンクス)」と、渋谷スクランブルスクエアに展開する「+Q (プラスク)ビューティー」のコスメ&ビューティーフロアの相互利用の強化を進めている。

こうした中、CO-URIBAを使用することで、「ゲーム感覚で、気軽に、興味を持ったブランドのサンプルやビューティー・リラクゼーションなどのサービスチケットが手に入り、新たなコスメ&ビューティーに出会うことができる。またそのブランド情報はLINEを通じて受け取ることができ、もっと知るきっかけにつながる」という、購買体験・価値の提供に向けて実施したのが「CO-URIBA」を通じた実証実験だ。

実証実験に使われた小型無人店舗サービス「CO-URIBA」 (旧 東急百貨店本店で)

2022年9月15~21日と10月27日~11月9日。2回に分けて「ShinQs」と「+Qビューティー」で行った実験はアカウント登録5000人以上。予想以上の反響だった。
実験には以下のような目的・目標を設定した。
1.旧 東急百貨店本店の顧客に、渋谷エリアのほかの店舗の認知・利用を広げる
2.各店の相互利用、買い回りを更に進める一つの解決策、ヒントとなる仕掛けを作る
3.東急百貨店コスメ&ビューティーのヘビーユーザーの動向把握
4.AIを駆使した顧客誘導から、利用顧客分析までの実現
5.TOKYU DEPARTMENT STORE BEAUTY 公式LINEアカウントの登録者数拡大
6.百貨店初のCO-URIBAを使った実験による話題づくり

約6000人がCO-URIBAを利用し、LINEアカウントの新規登録者数の獲得は約5000人にのぼった。「+Q ビューティー」で対象顧客の約21%、「ShinQs」で約14%、本店では約5%の顧客がCO-URIBAを利用。「+Q ビューティー」ではCO-URIBAに50~60人の列ができることもあった。

実験では、狙いや目的などテーマを策定し、企画立案から時間をかけずに短サイクルでPoC(概念実験)を繰り返すことの重要性を学ぶことができた。顧客の動きが想定と異なるケースや、どのようにしたら購買体験したいというマインドになってくれるのか、PoCでPDCAを何度も繰り返すうちに、その重要なヒントが見えてくるというわけだ。
渋谷という立地の特性上、あらゆる年代や性別、価値観を持つ方々にCO-URIBAを体感してもらえた価値も非常に大きいという。

「+Q ビューティー」渋谷スクランブルスクエア店の「CO-URIBA」。長い順番待ちの列ができた日もあった

◆今後の展開は?
日本には完全無人で店舗サービスを一般化できている企業はない。オペレーション(主にシステム面)で改善も必要だが、東急百貨店は、日立製作所との共創・実験を、今までにない購買体験・価値の提供に向けたプロジェクトの始まりと位置づけている。
同じ渋谷でも、ターゲットやショップラインナップの異なる化粧品売場を利用するお客様の属性データ(LINE UID)、CO-URIBA実機を利用した際の行動データ(ブランド、アイテムについての興味関心)、出入口で実施したアンケート結果のデータを紐づけて、分析し、今後、取引先との施策やサービス立案に活かしていく考えだ。

◆担当者はこう見た
多くのお客様へ新たな購買体験を
【東急百貨店】 OMO推進事業部 事業戦略部 事業開発当マネジャー 吉田 薫氏
CO-URIBAの一番のウリは無人店舗サービスを提供する裏側で、実機前で起こっているお客様の行動データを取得、分析できる点にあります。今回の化粧品のように、データマーケティング分野での活用を視野に入れて、渋谷、東急線沿線に顧客接点を持つ当社の強みを活かして、他のカテゴリー、各店へと派生させ、新しい購買体験を推進していきたいと考えています。

 

顧客の予想外行動、利便性をより高く
【日立製作所】金融システム営業統括本部 事業企画本部 Lumada事業推進部 担当部長 西本 友樹氏
今回、マーケティングや小売の可能性を広げるような実証実験ができた一方で、顧客はシナリオどおりには動かないという現実にも直面しました。今後、導入を広げて最適な機能や運用を突き詰め、利便性の高い買い物体験を提供していきたい。また、取得した顧客行動データを活用した高精度なマーケティング施策を実現し、メーカーや企業との協業を強化していくきっかけになればと考えています。