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コロナ禍、小売業の「変化対応」迫る ~流通アナリスト・渡辺広明氏に聞く㊤

新型コロナウイルスの影響によって、コンビニやスーパーを始めとした小売業のビジネス環境にどのような変化が生じ、店側はどう対応を迫られているのか。
ローソン勤務などを経て、コンビニを中心に小売業界の分析を手がける流通アナリスト・渡辺広明氏は「小売業は消費者のニーズに合わせて進化する『変化対応業』。転換期の今こそ真価が問われる」と語る。

■「中食」取り込みカギ

――新型コロナの感染拡大によって、小売業にはどのような変化が生まれていますか。

小売業を取り巻く環境はコロナ禍で激変しています。大きくいえば、まずネット通販の普及がより加速している。これから長い目でみると、本格的なネット通販の時代を迎えるでしょう。
ただ、ネット通販に置き換わらないのが、総菜や、家庭で調理する肉・野菜といった食材を含む広い意味での「中食(なかしょく)」の分野です。これら即食系の食べ物はリアルの店頭で買う、それ以外はネットで、と使い分けるようになっていく。これが大きな流れで、リアル小売業が生き残る道はいかに中食需要を取り込むかにかかっています。
実際、エリアに根差した食品スーパーではコロナ禍の「巣ごもり」需要により、売り上げを伸ばした店舗が目立ちました。

インタビューに答える渡辺広明氏(東京都内で)

■テレワークで二極化

コンビニ業界では、コロナ禍でテレワークが浸透し、ビジネス立地の店舗で売り上げが2~3割減と厳しくなる一方、住宅立地の店舗では前年比プラスと好調です。今後、テレワークがゼロになることは考えにくいので、大都市圏のビジネス立地で売り上げが完全に元に戻ることはないでしょう。

――店側にはどのような対応が必要になってきますか。

コンビニもスーパーも、固定客づくりをしなければ未来はないと思います。そのためには、きめ細やかな顧客対応が必要になる。
たとえば、ビジネス立地と住宅街とでは品ぞろえや販促内容を変えなくてはいけない。大都市圏と地方で同じことをやっていてはいけないということです。この点、スーパーやドラッグストアはもともと比較的地域に根付いて営業しているので対応しやすいと言えます。コンビニは本部によるセントラル方式の運営なので、やや難しいですが、コンビニも基本の品ぞろえはしっかり維持しつつ、1~2割は店舗ごとに工夫しながら売り場を柔軟に変えていく必要があると思っています。

■野菜売るコンビニ

――具体的にはどのようなイメージですか?

ユニークな事例があります。東京・世田谷のあるコンビニでは、店舗で野菜を仕入れて販売しており、地元客に好評です。世田谷は空き家率が都内でも高い。シニア世代も多いが、スーパーが意外と少ない。これを補完するために野菜を仕入れているコンビニがあるのです。
その日の朝に市場で仕入れる野菜は、コンビニが得意とするセントラルバイイング(本部調達)には向いていません。この弱みをカバーするため、店の工夫によって地域に密着した対応をしている好例といえます。
また、神奈川・平塚のセブン-イレブンでは、100円ショップのダイソー商品を販売する実証実験をしています。ファミリーマートの一部店舗では、コインランドリーやドラッグストアを併設している例もある。地域ごとにニーズをとらえた上で、新たなチャレンジに踏み出す店舗が出てきているのです。

■問われる「変化対応業」の力

――誕生から40年を迎えるコンビニの歴史の中でも、転換期を迎えているということでしょうか。

大きな転換期ですね。店舗数も売上高もずっと右肩上がりで来たコンビニの売り上げがこんなに落ちたことはありません。

<日本フランチャイズチェーン協会(東京)によると、2020年の全国のコンビニ売上高は11月まで9か月連続のマイナスとなり、在宅勤務や外出自粛の影響をもろに受けている>

これに加え、かねて高齢化・個食化で消費者のニーズも大きく変わってきています。
スーパーやドラッグストアも、売り場のスペースに限りがあるため、多様化する消費者のニーズに完全には応えきれません。とくに中食以外の日用品ではネット通販に比べて分が悪い状況です。
ただ、小売業は「変化対応業」とも言われています。ますます激しい変化にさらされる中、トライ&エラーを重ねながら消費者のニーズをつかむことが大事になってくると思います。

渡辺 広明(わたなべ・ひろあき) 流通アナリスト。1967年、静岡県浜松市生まれ。東洋大学法学部卒。ローソンで22年間、店長・バイヤーとして仕入れ、商品開発を経験。ポーラ・オルビス、TBCでブランド開発や海外業務などに7年間携わった後、独立。現在、「やらまいかマーケティング」代表取締役。著書に「コンビニが日本から消えたなら」(ベストセラーズ)などがある。
 

<㊦は近日掲載の予定です>