リテールアド・コンソーシアムFORUM
「ニューノーマル時代のリテール販促戦略」
動画アーカイブ③

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③講演「小売業における感覚マーケティングの展開」
  ―消費者の五感に訴える店舗販促を考える―
 

平木 いくみ氏
東京国際大学 商学部教授
1998年 、早稲田大学商学部を卒業後、金融機関勤務を経て2000年、早稲田大学商学研究科修士課程へ進学。現在、東京国際大学教授。専攻は、マーケティングおよび消費者行動。主な著書に「消費者心理学」(共著,勁草書房)、「マーケティング論」(共著,放送大学教育振興会)、「感覚マーケティング」(共訳,有斐閣)などがある。日本商業学会、日本マーケティング学会、日本消費者行動研究学会、日本広告学会他、海外学会へ所属。埼玉県公共事業審査委員、中小企業診断士試験委員を歴任。




【講演当日に寄せられた質問と回答】


Q.音に関する質問です。売場に「呼び込み君:商品名」といわれる音響機器がおかれていますが、お店に再来店につながるようなものはありますでしょうか?
A.「呼び込み君」は大手スーパーマーケットを中心に馴染みのある音となりましたので、呼び込み君を聞くと、音楽と店舗との適合性から、購入しようとする商品に影響する可能性は考えられそうですね。仮に、一般的・日常利用の店舗という形になるのであれば、呼び込み君を聞くことにより、スーパーのコア商品である中低価格帯の商品の売り上げは伸びる可能性があります。一方で、呼び込み君を聞くことにより、高額商品やプレミアム商品への購入は抑制されるという効果もでてくるかもしれません。しかし、呼び込み君が日用品を扱う店舗において普及している状況を踏まえると、ネガティブな効果(高額商品に及ぼす影響)は限定的で、ポジティブ効果の方が高いように思われます。店舗における音楽の研究は、販促用音楽、環境音楽(BGM)、アナウンスにおける声の研究など、感覚の影響を考慮しながらさまざまな視点で進められておりますが、ほとんどが音楽を聴いている時点での評価や行動への影響が中心であり、再来店を含めた将来への影響に関する研究は極めて限定的です。今後の研究課題としたいと思います。


Q.調査結果の効果ですが、紙クーポンを先に送ると使用が促進するとのことですが、これは順番が逆だと効果が落ちるのでしょうか?
A.我々の調査によると、紙と電子クーポンの送付順序は、紙を最初に送った方が受け取った消費者が「うれしい」と感じやすく、使用を促進する傾向が見られました。これは予期せぬ刺激に対し高い嬉しさ感情が生じるというサプライズ効果を表しています。電子よりも紙、そして紙に慣れ親しんでいる世代より紙に慣れ親しんでないデジタルネイティブほど、予想外の紙クーポンにサプライズ効果が大きくでた(高い喜びを感じた)結果だと考えられます。また、今回はご紹介しておりませんが、この実験では電子クーポンだけの条件も設定しておりますが、複数回の送付のなかで、電子クーポンだけの条件よりも、(順序はともかく)紙クーポンを混ぜた方が、高い利用促進につながることも示されており、紙媒体の有効性が支持されています。紙とデジタルとの組み合わせにおける順序効果は、デジタルに比べ高額な紙媒体の利用において1つの有益な示唆を提供しており、今後も研究所のメンバーとともに、紙とデジタルの組み合わせにおける効果的な使い方について、検証を進めていきたいと考えています。


Q.講演ありがとうございました。お話を聞いていてとても興味深く、実験内容など面白さを感じました。一つ気になったのですが、こういった感覚というのは、国を問わず共通のものなのでしょうか。教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします。
A.デジタルネイティブ世代とそれ以上の世代で紙の効果が異なるように、感覚には文化的差異も存在します。たとえば、アラビア語圏の国では文字を左から右に読んだり、上から下に読んだりしないため、パッケージの左上に製品画像を掲載すると軽い印象がもたれるという傾向は、これらの国では見られないようです。また、文化圏に関わらず青への選好は多くの文化圏で高い傾向が見られますが、各文化圏の催事期間は別の色の方が選ばれるという研究もあります。ハロウィンの時期になるとオレンジ色の製品の売り上げが、中国の旧正月の時期には赤色の製品の売り上げが伸びるという傾向は、色に及ぼす選好が文化的規範に影響を受けていることを表しています。匂いに関しても、洗剤の香りが「清潔」の概念を活性化させることは多くの文化圏で共通していますが、「幸せな」香り(家庭料理や結婚式で用いられる花の香等)や「悲しい」香り(お葬式で提供有れる香り:日本では香、ヒンドゥー教では薪、中国ではお粥等)は文化圏によって大きく異なります。個人が育つ過程で体験してきた環境の刺激が異なれば、感覚による反応は異なる可能性が高く、世代、国籍、年齢、文化など多くの視点から対象とする消費者について、感覚の影響を検討していく必要があります。


【平木いくみ教授 著書】

翻訳本
「感覚マーケティング-顧客の五感が買い物に影響を与えるー」(2016)、
平木いくみ・石井裕明・外川拓 (訳)、有斐閣
 

テキスト
「消費者心理学」(2018)、
(山田一成・池内裕美(編)、平木いくみ「第1章 感覚と知覚」)、勁草書房